カエルと彼の人生について
on the frog and his life
2015年9月20日刊行
出版社 冬青社
発行者 高橋国博
寄稿、編集協力 バス・ウィルダース
翻訳 川田尚人(英語)
石山さつき(日本語)
デザイン 石山さつき
印刷・製本 凸版印刷株式会社
プリンティングディレクター 杉山幸次
104ページ(写真95点)/上製本
290x225x17mm / 935g
ISBN:978-4-88773-164-6 C0072
価格 3,800円+税
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(本書より)
あの時のこと、すぐ先のこと、そしてたぶん
瞬間はユニークで二度と繰り返さない。それは宇宙で見つけた小群星のような時の小さなかけらである。
それは、価値を研究している収集家に寄せ集められ、読み解かれ、そして凝結(かたまりに)される。時は飢え、カエルは裸になった。今はクモの糸や塵でできた透明の服をまとっている。時は全てを変える。時は肉を風化させ、草を風に揺らし、あらゆるものを互いに絶え間なく置き替える。
イメージ(表象)は氷結された、時の断片である。
私達が見ようとしているもの全ては、その時間の中にのみ存在する一時的な位置で、そこにある他のものとの相対性である。写真家の表現領域(フレームワーク)はマクロからミクロまであらゆるもの同士の関係を探りだし、それらの要素をある特定の瞬間で綴じ合わせる。瞬間は言葉をかたち作る。言葉は文の描写となる。文は、ほんの1秒後には全然違う表現になったかもしれない言葉の組み合わせでできている。
イメージ(写しとった像)は私的な宝物を表している。物事との関係性への重要な「問いかけ」は、その「答え」よりも大切である。
それは私達に、写真家とその時に彼を取り巻いていた物事との親密な関係への追求を見せてくれる。そして偶然の風変わりな刹那に対する彼の驚きと、過ぎ去った時間との間に生じた予想外の関係性を認識させる。
要素(エレメント)の組み合わせは新たな価値を生み出し、意味を創造する。価値は、自分自身を守ることはできない。意味は、まるで一瞬のように繊細で壊れやすい。緑のカエルが頭の中で飛び跳ねた。
バス・ウィルダース
写真家、セイントヨースト美術大学教授 (オランダ)