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Qualia

 


 
2017年11月22日刊行
出版社       冬青社
発行者       高橋国博
デザイン   白岩砂紀
翻訳者       城林希里香(しろばやしきりこ)
編集・進行   湯本愛
印刷・製本   凸版印刷株式会社
Printing AD 杉山幸次
営業           猪野直貴
 
96ページ(写真90点)/上製本
245×165mm

ISBN:978-4-88773-183-7 C0072
価格 3,500円+税
 
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(本書より) 

 
 例えばわたしが、「空が青くて綺麗だね」と言ったとき、あなたが「そうだね」と返してくれたとして、けれど果たしてわたしにとっての「青」とあなたにとっての「青」は同じ色なのだろうか、わたしにとって「綺麗」なものは、あなたにとっても「綺麗」なのだろうか。
 
 というようなことを、ふと考えることがありますが、それを確かめる手段を、わたしたちは永遠に持たないでしょう。それなので、大体は「空が青くて綺麗だね」と言われたら「そうだね」と返し、いつしかあなたにとっての「青」も、あなたにとっての「綺麗」も、想像することは減っていくような気がします。そもそも、そうでなければわたしたちの日常会話は、ほとんど成り立たなくなってしまうはずです。
 
 この写真集は、そんなふうに「言葉」に頼った人間の世界から、わたしたちを連れ出してくれるように感じます。
 闇の中の仄かな光は、蛍か月か。それは生物か、無生物か。そこは地球か、あるいは宇宙か。カメラを通して等価に見つめられる被写体たちは、わたしたちが普段相反したものとして区別する「こっち」と「あっち」の境界線を越えて浮遊しています。見慣れたものと新たに出会い直す体験は、わたしたちに、自由さと、心許なさの両方を与えてくれるものかもしれません。
 
 わたしたちは自らの知覚体験を伝達するとき、「もの」や「感情」ひとつひとつを名付けた言葉を頼っています。しかし、知覚体験そのものは決して共有することができません。

 「Qualia」。この写真集は、「決して共有することができない」という切なさそのものをタイトルにしているにも関わらず、わたしはこうして言葉を紡ぎながら、「それで一体、あなたには、どう見えているのだろう」と、やっぱり想像せずにはいられないのでした。
 

湯本 愛(ギャラリー冬青 キュレーター)

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